この記事では、世の中に日々蓄積される膨大なデータ(ビックデータ)と
ブロックチェーンの世界を繋げるOracle(オラクル)という技術を紹介します。
目次
• Oracleとは?
• Oracleが登場した背景
• Oracleの機能
• どのように使われている?
• 中央集権型Oracleと分散型Oracle
• 代表的なOracle3選
☑︎Provable(中央集権型)
☑︎Chainlink(分散型)
☑︎Band Protocol(分散型)
• 今後どうなる?
Oracleとは
インターネット、ソフトウェア技術、
A I、ブロックチェーン…
テクノロジーは日々進化し、新たな産業が生み出され、
人の価値観も多様化しています。
脈々と続く技術進歩のうえに成り立つ仮想通貨市場には、
これまで積み上げられてきた技術が集約されています。
Oracleという言葉を調べると
「もともとあった放送電波に、他の信号(データ)を加えて送る(多重伝送技術)ことで、従来サービスの拡大を行うこと」と出てきます。
仮想通貨市場のOracleとは様々なデータとブロックチェーンを繋ぐ中継役です。
データの提供者から必要なデータを取得し、ブロックチェーンに送信しやすいデータへ加工して、送り届ける役割を担います。
異なる2つの世界を結ぶ超優秀な同時通訳者というイメージでしょうか。

Oracleが登場した背景
1980年代後半にインターネットが商用化され、情報社会が広がり、
世の中でには様々なデータが蓄積されるようになります。
今ではIOTデバイスやクラウド技術によりさらに膨大なデータが扱われるように
なりました。
仮想通貨市場では、リーマンショック後の2009年にビットコインが登場し、
2013年に当時19歳だったヴィタリック・ブテリン氏(Vitalik Buterin;ロシア系カナダ人)がEthereumのホワイトペーパーを公表しました。
これ以降、ブロックチェーン技術を用いたスマートコントラクトが進歩し、
国境を超えた非中央集権型の取引や金融決済が可能になります。
世界中のビックデータとブロックチェーンのスマートコントラクトの融合により、より快適に商取引できる環境ができました。
この“融合”する役目が必要になったため、オラクルが登場します。
ブロックチェーンは独立したネットワークとして作られています。
外部と分離されているがゆえに、ブロックチェーンに書き込まれるデータ
(台帳)が信憑性を持つという特徴があります。
ブロックチェーンネットワークには、外部データの出し入れ機能はもともと備わっていません。
外部データとの橋渡し役としてOracleが求められるようになったんですね。

Oracleの機能
ここではOracleの基本的機能を解説します。
*受付係
ブロックチェーン側から出された外部データへのリクエストを
受け付けています
*データの取得係
注文に応じて、APIや事業体が提出するデータを取得しに行きます
*翻訳係
外部から取ってきたデータをブロックチェーンにも読み取れる
データに変換します
*検証係
外部データに対して、デジタル署名やゼロナレッジ証明を組み合わせた
暗号データを加えます
*計算係
複数のOracleノードが変換したデータから、注文に対する適切な
値を導き出します
*送信係
ブロックチェーン上に暗号データを送信します
*報告係
スマートコントラクトが行われた際に、外部のシステムへ結果の
通達や支払いの指示を行います
Oracleはブロックチェーンと外部データ(オフチェーン)の両方に働きかけ、
動作をうながす役割を担っています。
どのように使われている?
Oracleのユースケースも広がっています。
外部のデータをブロックチェーンと繋ぐことで、
従来の取引をスマートコントラクトに置き換える動きが活発になっています。
- 保険
- 予測市場(選挙、ギャンブル)
- ゲームアプリ
- スポーツ市場(チームトークンやトレーディングカード)
- NFT
- 慈善事業(チャリティー活動へのインセンティブなど)
Oracleの機能が発達したことで、これまでサービスが行き届いていなかった地域や、収益化が難しかった事業にも資産が流れ込むようになっています。
インターネット、Oracle、ブロックチェーンテクノロジーの進展により、フロンティア開拓は今後も加速しそうです。
中央集権型Oracleと分散型Oracle
外部データとブロックチェーンネットワークの橋渡しとして機能するOracleですが、それぞれの運営プロジェクトの形態は①中央集権型と②分散型に分かれます。
- 一元管理されているため、データの集約/送信スピードが速い
- 社会的信用の高い事業体が運営することで、外部からの信頼を得やすい
中央集権型は、スピードや安心感という点で優れています。
一方で
- ハッキング、サーバーダウン、内部からのデータ改ざんが起きたときの被害が尽大
- その事業体が取得/変換したデータの信頼性、有効性が測りづらい
という問題もあります。
こういったデータ管理の負担やリスクを均質化するために、
分散型Oracleが台頭しています。
- 各Oracleは複数の独立したデータベースから必要なデータを取ってくる
- データの有効性検証を複数のノード(管理者みたいなもの)で行う
情報やリスクの一極集中を避ける手段として
分散化の流れが進んでいます。
分散型Oracleのこれからの課題として
- 正確で信頼性の高いデータを効率的に集約する
- 分散型ゆえにOracle機能全体のアップグレードに手間がかかる
といった中央集権型と表裏一体の課題があります。
DeFi(Decentralized Finance)やDAO(Decentralized Autonomous Organization)
が人気を集まるのに伴い、Oracleも分散型による運営が望ましくなっていくのでしょうか。
代表的なOracle3選
Provable(中央集権型)
Provableは、分散型アプリケーション(Dapps)に正しいデータを提供する
Oracleとして人気があります。
データが本物であることの証明(Authenticity Proofs)に優れ、信頼性を高めています。
鑑定書付きのデータをやり取りする感じですかね。
Chainlink(分散型)
ChainlinkはブロックチェーンOracleで最も認知されているプロジェクトです。
2017年9月にホワイトペーパーが公表されました。
- ネイティブトークン$LINK
- 時価総額は8206億円
- 24h取引高は828億円
(いずれも2021年7月24日時点)
とスケールの大きさも伺えます。
分散型で運営されており
- 有力なデータプロバイダー(Coin GeckoやAlpha Vantage)
- ノードプロバイダー(LinkPoolやStake fish)
とパートナー関係にあり、巨大エコシステムを構築しています。
*データソースや検証ノードを上手く分散化させている
*各ノードが処理したデジタル署名付きのデータを基に、パフォーマンスの評価/報酬システムがある
*ノード自身がセキュリティレベルの認証、KYC(Know-Your-Costomor : 本人確認)を取得する制度を設け、ノードのパフォーマンス・信頼性を維持できる
またChainlinkは
- ユネスコと提携した途上国の社会問題への支援
- 新興国でのDefi保険の提供
- スポーツ市場での予測トレード、トレーディングカードNFT事業 etc…
といった取組みを行うなど、ますます活発化しています。
Chainlinkが提供することのできるハイブリッドスマートコントラクト
(現実世界の出来事と暗号資産を繋いで取引を成立させるテクノロジー)は
- DeFi保険
- 予測市場
- スポーツ
- ゲーム
といった成長産業との相性がバツグンに良く、ユースケースはますます広がると思います。
Chainlinkの今後の動向には注目です。
Band Protocol(分散型)
Band Protocolも他のオラクル同様に実世界のデータをブロックチェーンアプリに提供し、スマートコントラクトに接続できる機能を持っています。
2019年9月にERC20規格としてプロジェクトがスタートしたのち、2020年6月にCosmosチェーンに移行しました。
- ネイティブトークンは$BAND
- 時価総額 1869億円
- 24h取引額 36億円
(いずれも2021年7月24日時点)
短期間で市場規模を拡大させており、長期視点の開発が進むCosmosネットワーク上でさらなるユースケースの向上が見込まれます。
Band Protocol自身がチェーンをまたいでデータのやり取りができるクロスチェーンoracleであり、クロスチェーン対応DeFiであるOmm Financeとの提携など、チェーンにとらわれず活躍しています。
今回紹介したOracleは、DeFi保険の代表格Etheriscとパートナーシップを結んでいます。
中央集権型、分散型等いう形態の違いはありますが、いずれのOracleも信頼できるデータをスマートコントラクトに繋げて新たなサービスを市場に提供しています。
今後どうなる?
ビックデータの集約/分析、ブロックチェーンテクノロジーの需要増加と並行して、Oracleも必然的に拡大していくと思います。
Oracle自体の今後の動きとしては
- ユースケースがさらに拡大(DeFi保険など)
- クロスチェーン対応Oracleの躍進
- データの取得、検証、ブロックチェーンへの送信などの仕組みをより透明化する
Chainlinkなどが進めるハイブリッドスマートコントラクトのユースケースはますます加速し、より多くの人や資金が集まる巨大経済圏がつくられていくでしょう。
